
最近、「QOL(クオリティ オブ ライフ)」という言葉をよく耳にします。意味はなんとなくわかるけど、自分との関係を意識している方はあまり多くないのでは? QOLは、患者さんの生活や生命を尊重しようという、とても大事な考え方。慢性頭痛の患者さんには、このQOLが障害されている人も少なくありません。
「頭痛とQOL」について、神奈川歯科大学附属横浜クリニック 内科学講座 助教授 五十嵐久佳先生にお話を聞いてきました。

片頭痛は慢性頭痛の中でも特に痛みが強く、動くとよけい痛みがひどくなりさらには吐き気までするとてもつらい病気です。片頭痛の発作中は、仕事や家事ができなかったり、お子さんの面倒が見られない、ひどくなると寝込んでしまう方もいらっしゃいます。
糖尿病や高血圧は放っておくと命の危険があり、毎日治療のために薬を飲まなければならないということがありますが、それでも普段は、仕事に行けないとかパーティーに行けないというわけではありませんよね。それに比べると片頭痛は将来、危険な病気につながるという病気ではありませんし、頭痛が治まれば何ともないのですが、頭痛発作中は仕事が思うようにできなかったり、約束していた集まりに行けなかったりしますので、片頭痛患者さんのQOLはとても低いと言えます。
頭痛で会社を休むとズル休みと思われるような風潮がありますし、無理して行ってみても結局吐いてしまって早退をすることになります。結局、仕事を辞めなければいけないという方も実際にいらっしゃいました。

私の頭痛外来へやって来る患者さんは、頭痛の痛みにガマンできなくなってくる方がほとんどですから、結果的に片頭痛で特に重症の方が多くなっています。ただし一般的には、片頭痛の方の受診率は低く、とにかく一度でも受診したことがあるという方を入れても30%程度、定期的に通院するという方は2.7%しかいらっしゃいません。緊張型頭痛では痛みはそんなに強くありませんし、たまに頭痛が起こるようでしたら生活に支障はありませんので、受診する方は少ないのですが、月に15日以上も頭痛が続けて起こるような方は受診します。群発頭痛の方は、ほとんどの方が受診します。ただし、きちんと診断されることは少なく、4〜5年前の私の調査では、群発頭痛と診断されるまでに平均9年かかっていました。
片頭痛の方たちが受診する割合が低いのは、多くの方は痛みに大変な思いをしていらっしゃるのに、忙しくて行くヒマがない、どこに行ったらいいかわからない、痛いときには動けない、ということで多くの方が市販薬でガマンなさっているのが現実です。痛みのないときに受診してもよい、ということをご存知ない方も多いようです。

生活の障害を少なくするためには、まず、自分の頭痛のサイクルをハッキリ見極めることが重要です。特に女性の場合、半数の方は月経に関連して片頭痛が起こるという自覚がありますが、この頭痛が厄介です。普段だったら効く薬も、月経期間中は効かなかったり、頭痛の持続時間が長引いたりします。自分の頭痛のサイクルをしっかり把握すれば、月経と関係する頭痛なのかどうかわかります。もし、月経に関連して頭痛が起こるようであれば、この期間は仕事のスケジュールを詰め込まない、睡眠をきちんと取る、食事を規則的に摂るなどの配慮が必要です。
頭痛が起こっても、市販薬を早めに飲めば、1〜2時間で治まるようであれば問題はありません。ただし、週に2日以上、毎週のごとく市販薬を飲むようであれば、薬の飲みすぎによって頭痛がこじれてくる場合があります。ぜひ、こじれる前に専門医にかかってください。

WHO(世界保健機関)が提唱する健康寿命のように、最近では、ただ長く生きるのではなくいかに人間が人間として健やかに生きていけるかが重要と考えられるようになりました。
残念ながら、今の段階では片頭痛を根本的に治すことはできませんが、頭痛治療にトリプタン製剤という特効薬が加わり、予防薬も増えてくるなど頭痛治療も進歩してきています。これらの薬を使えば、月4回の発作を2回に、4時間寝込んでしまうとしたらそれを2時間に減らすことができます。ガマンは必要ありません。片頭痛は、QOLの大きな障害要因ですが、同時に薬でコントロールできる病気でもあります。せっかく特効薬があるのですから、その恩恵に浴さない手はないと思います。月1回でも頭痛のせいで自分の生活が障害されているのであれば、医師にご相談ください。
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